伊坂幸太郎『AX』感想レビュー│ネタバレなしで恐妻家な殺し屋の魅力を徹底解説

AX 感想レビュー 本紹介
ウバ
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伊坂幸太郎さんの『AX』は、殺し屋シリーズ第3弾

一流の殺し屋でありながら、愛妻家で恐妻家という主人公の家族愛を描いた連作短編集です。

なによりも家族を愛して大切にしている主人公・の魅力に、読者はハートを射抜かれます

そんな『AX』のおすすめポイントを、実際に読んだ感想と共に紹介していきます。

それじゃあ、早速いってみよー

面白さ4.5
主人公の魅力5.0
ストーリー3.5
読書初心者おすすめ度5.0
『AX』の評価

『AX』の基本情報

タイトルAX
著者伊坂幸太郎
出版社KADOKAWA
発行年2017年
ジャンルクライムサスペンス/ホームドラマ
伊坂幸太郎

2000年『オーデュボンの祈り』で第5回新潮ミステリー倶楽部賞を受賞しデビュー。

以降、様々な文学賞を受賞する、超売れっ子作家。

代表作に『重力ピエロ』 『砂漠』 『ゴールデンスランバー』

などがある。

『AX』のあらすじ

業界内でも一目置かれる殺し屋・兜は、愛妻家であり、同時に恐妻家でもあった。家ではまるで妻に頭が上がらない。

それは、一人息子の克巳もあきれるほどだ。

そんな兜は、克巳が生まれたことをきっかけに仕事を辞めたいと願うが、引退に必要な資金を得るために依頼を受け続ける。

家族はもちろん、兜が物騒な仕事をしていることを知らない。

表題作『AX』をはじめとする短編を通じ、殺し屋でありながら家族を愛する姿を描いたエンターテインメント小説。

『AX』のおすすめポイント3選(主人公・ストーリー・構成)

『AX』は、主人公・兜の家族愛を描いた連作短編集です。

殺し屋を主人公に置きながら、そこで描かれるのは家族愛。

読み進めるほどに、可愛くすら感じる兜に夢中になること間違いなし

そんな、エンターテインメント小説の最高峰と名高い本作の魅力を、読んだ感想を元に3つに絞って紹介していきます!

【主人公】一流の殺し屋は恐妻家!魅力あふれる兜のギャップ

主人公 一人の人形が複数の人形を倒している

『AX』は、主人公のを愛でるためにあると言っても過言ではありません。

裏社会では名の知られた、それこそ超一流の殺し屋である兜は、とにかく妻に頭が上がらない。

そのギャップが兜を可愛くしています。

そんな兜の魅力に気づくのに、そう時間はかかりません。ページを開いてすぐ、兜の魅力に引き込まれます。

それは物語の冒頭、同業者の檸檬・蜜柑コンビと兜が会話をするシーン。そこでは『所帯持ちが夜遅く家に帰った時は何を食べるのが正解か』の話になります。

このシーンだけで兜を好きになれるんです

まずはカップラーメンについての会話。

「包装しているビニールを破る音、蓋を開ける音、お湯を入れる音、深夜に食べるにはあまりにもうるさい」

「誰も気づきゃしねえだろうに」

「うちの妻は気づく」兜は答える。

それならどうするのだと蜜柑が尋ねると、兜は答えます。

「バナナか、おにぎり」

なるほど、と同業者の二人が感心しかけた。「鋭いな」と。が、兜はすぐに、「と考える奴はまだ、甘い」とぴしゃりと言い切る。

それなら、いったい何を食べるのが正解なのか。

その答えは、ぜひ読んでからお確かめください

意外な着地点に笑ってしまいます。

ウバ
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ちなみに。檸檬・蜜柑コンビは、同著者の『マリアビートル』で活躍しています。

未読の方やどんな内容か忘れた方は、紹介記事を書いていますのでご活用ください

伊坂幸太郎『マリアビートル』レビュー│疾走感Maxな密室クライムサスペンス

上記以外のエピソードとして、兜は一人息子の克巳には『とにかくフェアでいろと伝えています。

『自分がやった時はいいけれど、自分がやられた時は駄目』というのはアンフェアだと。

それに対して克巳が、「親父に対しておふくろの態度はアンフェアじゃないか」と伝えると、兜は心の理解者ができたと泣きそうになったりします。

という具合に、ページを捲るたびに恐妻家エピソードが連発します。

そんな兜の魅力は、これだけ妻に怯えていても家族を何よりも大切に思っているところです。

実際に読んでみて、兜みたいな男になりたいとすら思ってしまいます。

兜のセリフで心に響いたのはコチラ。

「息子の人生のことで頭を悩ませるのが、自分のやりたいことなんだ」

カッコいい

物語の最後まで兜に魅了され続ける一冊になっています

手足のある本
手足のある本

一流の殺し屋である兜より、奥様のほうが強い気がするボン……。

ウバ
ウバ

そうですね。

『AX』で1番強いのは、間違いなく彼女でしょう。

【ストーリー】根底にあるのは家族愛!伊坂節全開で描かれる日常

ストーリーと書かれたブロックが並んでいる

『AX』は、伊坂幸太郎さんの作品の中で、殺し屋シリーズとよばれる作品群のひとつです。

その名の通り、複数の殺し屋たちが活躍するストーリーになっていて、本作でも殺しのシーンが描かれています。

ですが、それは本作の一部でしかありません。

『AX』のストーリーの根底にあるのは家族愛。

殺し屋の物語というより、一人の父親としての兜の日常が物語のキモです。

たとえば。

自宅の庭に蜂の巣ができて、妻から市役所に駆除の依頼をするように頼まれる。蜂くらい自分で退治できると頑張る兜の話だったり、息子の進路相談で学校に行く話だったり。

同じく恐妻家の方と意気投合して友達になったりと、穏やかなストーリーが続きます。

もちろんクライムサスペンス要素も含まれていて、その日常にちらちら同業者たちが登場して戦ったりします。

戦闘シーンもかっこよくて、兜の殺し屋としての実力が丁寧に描かれています。

残酷な描写もありますが、全体的にユーモラスに表現されていて軽やかな読み心地を実現

伊坂幸太郎さん特有の独特な言い回しも、その軽やかな読み心地に一役買っています。

私はこれを勝手に『伊坂節』とよんでいます。

伊坂節がストーリーにユーモアを与えてくれていて、クスッとする場面も多くあります。

ただユーモラスなだけではなく、少し考えさせられる名言が多いということもポイント。

明るい性格です、と自称する人間がえてして

他者を巻き込まなくては人生を楽しめないのを兜は知っている。

なるほど、確かにそうだと思わされる名言。

このような言葉選びが物語に彩りを添えています。

『AX』以外の殺し屋シリーズは本格的なクライムサスペンスなのに対して、本作は本格的ホームドラマといった感じで、読み手を優しい気持ちにしてくれます。

殺し屋が主人公ということを忘れてしまうくらい、ホームドラマ感満載のストーリーとなっています

手足のある本
手足のある本

殺し屋シリーズだから物騒な話だと思ったボン

ウバ
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ものすごく穏やかなストーリーですからね。

しかし、ホームドラマでありながらクライムサスペンス感もしっかり楽しむことができるストーリーになっています

【構成】読書初心者に優しい!サクサク読める連作短編集

男性が座って本を開いている

『AX』は、兜を主人公に展開される連作短編集です。

表題作『AX』からはじまって、『BEE』『Crayon』『EXIT』『FINE』と5つの短編が収録されています。

そのほとんどがを主人公に進んでいきますが、最後の『FINE』は息子の克巳が主人公を務めます。

文庫本で350ページ以上はありますが、ひとつひとつのストーリーは短く区切られていて、とても読みやすい一冊です。

そのため、普段あまり読書をしない方にはとくにおすすめで、内容の面白さも相まって読書デビューに最適です

短編だからと侮ることなかれ。

それぞれの内容は濃く、しっかりと読者を楽しませてくれます

『BEE』では兜がスズメバチと格闘して、『Crayon』では恐妻家仲間ができて、『EXIT』では強敵と戦います。

兜の魅力が存分に詰まったストーリーばかりですが、最後の『FINE』での伏線回収は気持ちがいいんです。

5つのストーリーがしっかり繋がっていて、スッキリと読み終わることができます。

そして、最後に語られる兜と妻の出会いのストーリーは心を持っていかれること必至

おすすめは、やはり表題作の『AX』

冒頭の数ページを読むだけで兜の魅力が伝わり、今から始まる読書の面白さに期待せずにはいられませんでした

手足のある本
手足のある本

どの短編も面白そうだボン

ウバ
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どのストーリーも根底には家族愛が描かれていて、本当に素晴らしいストーリーばかりです

さいごに

まずは、ここまで読んでいただきありがとうございます。

少しでも『AX』を読んでみたいと思っていただけたら幸いです。

本作は伊坂幸太郎さん作品の中で、殺し屋シリーズ第3弾となっています。

あくまでも世界線が繋がっているというだけで、ストーリーはそれぞれ独立しているため、どの作品から読んでも問題なく楽しむことができます。

中でも『AX』は、連作短編集ということもあって、読書初心者の方でも気軽に手に取れる作品だと思います。

兜という殺し屋の生き様。描かれる家族愛。どれひとつ取っても読者を楽しませる仕掛け満載です

愛妻家で恐妻家の主人公が織りなす、エンターテインメント小説

伊坂幸太郎さん『AX』

一度、手に取ってみてはいかがでしょうか。

最後の最後に。

『AX』を読んで面白いと思った方は、他にも伊坂幸太郎作品を紹介していますので、よろしかったらご訪問ください。

今日はここまで。

それでは、佐世保の隅っこからウバでした。

皆様の今日が幸せな一日でありますように。

プロフィール
この記事を書いた人
ウバさん

佐世保の隅っこで読書をしているオッサン。
妻と二人の子どもと共に細々と生きています。
読書の面白さを広めたくてブログを開設。
『ウバログ』が読書好きの溜まり場なるように頑張っていきます!

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