伊坂幸太郎『マリアビートル』レビュー│疾走感Maxな密室クライムサスペンス

マリアビートル 感想レビュー 本紹介
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伊坂幸太郎さんの『マリアビートル』は、新幹線の中で複数の殺し屋たちの行動と思惑が交差する物語。

新幹線という限られた空間に、これでもかと殺し屋を詰め込んだクライムサスペンスとなっています。

スタートからゴールまでノンストップで駆け抜けていくストーリーは、読者に息継ぎの隙すら与えません

そんな『マリアビートル』のおすすめポイントを、実際に読んだ感想とともに紹介していきます。

それじゃあ、早速いってみよー

衝撃度5.0
面白さ5.0
キャラクターの魅力4.5
読書初心者おすすめ度3.0
『マリアビートル』の評価
この記事でわかること
  • 『マリアビートル』のあらすじ
  • 『マリアビートル』のおすすめポイント3選(登場人物・疾走感・展開)

『マリアビートル』の基本情報

タイトルマリアビートル
著者伊坂幸太郎
出版社角川書店
発行年2010年
ジャンルミステリ/クライムサスペンス

2022年 ブラッド・ピット主演でハリウッド映画化

伊坂幸太郎

2000年『オーデュボンの祈り』で第5回新潮ミステリー倶楽部賞を受賞しデビュー。

以降、様々な文学賞を受賞する、超売れっ子作家。

代表作に『重力ピエロ『ゴールデンスランバー』『陽気なギャングが地球を回す』などがある。

『マリアビートル』のあらすじ

舞台は、東京から盛岡へ向かう東北新幹線「はやて」

息子を傷つけた中学生への復讐に燃える元殺し屋、木村

一見優等生だが、悪魔のような本性を隠す少年、王子

裏社会の依頼を受けて動く殺し屋コンビ、檸檬蜜柑

そして、とにかく運が悪くて気弱な殺し屋、七尾

同じ新幹線に乗り合わせた彼らの思惑は、次第に絡み合っていく。

疾走する新幹線の車内で、狙うものと狙われるもの。

やがて物語は、予想もつかない結末へと突き進んでいく──。

『マリアビートル』のおすすめポイント3選(感想込み・ネタバレなし)

『マリアビートル』は、スタートからゴールまで勢いが衰えることなく突き進む物語。

ページを捲るたびに衝撃が待っていて、どんどん物語に没入してしまいます。

登場人物にまともな奴なんていない

誰もが狂っている

そんな『マリアビートル』のおすすめポイントを、実際に読んだ感想を元にネタバレなしで3つに絞って紹介していきます

主人公は誰だ⁉胃もたれ必須の登場人物たち

登場人物 壁に画鋲が並んで刺さっている

『マリアビートル』には、個性豊かな登場人物が多く描かれています。

そのほとんどが殺し屋なので、本作が如何にバイオレンスな物語なのかがわかります。

しかし殺し屋然としていないというのがポイント

ここでは複数の殺し屋を含め、主要キャラクターを紹介していきます。

【アルコール中毒の元殺し屋】木村雄一

アルコール中毒でありながら、息子の仇をとるためにアルコールを断っている元殺し屋。

どこかうだつの上がらないキャラクター。

一人息子の渉がとある中学生に殺されかけて入院しており、その中学生に復讐するために新幹線に乗り込んでいます。

パッとしないキャラクターでありながら、気づけば応援してしまっているキャラクターです。

【しっかり者とトーマス】蜜柑と檸檬

見た目は似ているが性格は真反対。

文学好きでしっかり者の蜜柑と、大雑把な檸檬

殺しの腕は一流で、その界隈では名の知れた存在の彼ら。

しかし中身はユーモラスなキャラクターで、ふたりの掛け合いは愛おしくて面白く、読めば読むほど蜜柑と檸檬のファンになっていきます

ふたりとも魅力的なのですが、とくに檸檬が可愛いんです

檸檬は『きかんしゃトーマス』をこよなく愛していて、事あるごとにトーマスネタを挟んできます。

殺し屋がトーマス好きという設定は、おそらくは殺し屋業界で檸檬だけだと思います。

本作では裏社会の大物から、誘拐された息子の奪還と身代金の回収を依頼され、新幹線に乗っています。

【ツキから見放された男】七尾(天道虫)

とにかく不運な殺し屋。

殺しの腕は超一流なのに、とことんツキがない

やることなすこと、すべてが裏目に出てしまいます。

不運どころか、呪われている可能性があるくらいにツイていません。

  • 政治家の浮気現場の写真を撮るという依頼で滞在していたホテルで銃乱射事件が起きる。
  • ファストフード店で「うますぎる。うまさ爆発だ」と大袈裟に驚くという依頼の最中に、本当に店が爆発する。

このように、天道虫には不運がまとわりついています。

本作では、トランクを奪ってくるという依頼のため新幹線に乗車しています。

【天使の皮を被った悪魔】王子慧

見た目は普通の中学生。

しかし、その本性は悪魔そのもの。

邪悪で狡猾。読んでいて不快になるほど、とにかく凶悪なキャラクター。

木村雄一の息子・渉を、デパートの屋上から突き落として意識不明の重体にします。

それが原因で木村雄一から狙われます。

本作では、とある目的をもって新幹線に乗り込んでいます。

『マリアビートル』を読んで、彼を好きになる人はゼロです

【脇役とは言わせない】その他の登場人物

『マリアビートル』は、脇を固めるキャラクターの魅力もすばらしい

仕事の依頼を受けて七尾に指示を出している真莉亜。彼女と七尾のやり取りは、読んでいるだけで面白いです。

過去のいざこざで七尾のことを恨んでいる殺し屋・は、偶然にも同じ新幹線で七尾と遭遇します。

槿(あさがお)という、新幹線には乗っていませんが重要な役どころの殺し屋なんかも登場します。

他にも、スズメバチと呼ばれる殺し屋や、殺し屋界の伝説と呼ばれる人物まで登場。

作中、右も左も本当に殺し屋ばかりです

そんな中、鈴木という塾の講師がすばらしい存在感を発揮しています。

後半で彼が語る、『なぜ人を殺してはいけないのか』に対する答えには納得させられます。

本作で唯一の良心と言えるかもしれません。

鈴木槿は、同著者の『グラスホッパー』という作品に登場します。未読の方はコチラから
伊坂幸太郎『グラスホッパー』感想レビュー│クライムサスペンスの決定版!

本作には殺し屋が多数登場しますが、その誰もが個性豊かで魅力的です。

個性と個性がぶつかり合って、途中まで誰が主人公かわからないまま物語が進んでいきます。

というわけで、『マリアビートル』のおすすめポイント1つ目は、『主人公は誰だ⁉胃もたれ必須の登場人物たち』です

手足のある本
手足のある本

うわあ……本当に殺し屋ばかりだボン

ウバ
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ページを捲っても捲っても殺し屋が登場します。

しかも個性豊かで胃もたれ必須です

気を抜いたら置いていかれる!疾走感あふれるストーリー

新幹線 闇の中を新幹線が走っている

『マリアビートル』には多くの殺し屋が登場しますが、物語の舞台はほぼ新幹線の中だけです。

その限られた空間に、これでもかと殺し屋が詰め込まれています。

しかし、この『空間が限られている』ということが、本作に強烈な緊張感を生み、ストーリーに疾走感をもたらしています

逃げ場のない、それも決して広くない新幹線という空間に複数の殺し屋。

化学反応が起きないわけがないんです。

最初はバラバラだった彼らが、ページを捲るごとに絡み合っていく様は圧巻の一言。

とにかく事件が起き続けます。

それぞれのキャラクターの思惑が交差して、物語は混沌を極めます。

これだけの殺し屋を詰め込んでおきながら、それらが乱戦状態にならないのもポイント。

うまい具合にマッチとミスマッチを繰り返しながら進んでいきます。

それがもどかしく感じる部分もあるのですが、おかげでスムーズに読み進めることができます。

街ひとつを舞台にしても足りないくらいの出来事を、新幹線の中にギュッと詰め込んだ緊張感。

逃げ場のない舞台で、次から次に事件が起きる疾走感。

『緊張感×疾走感=快感』

こんな方程式が当てはまる、とても刺激的なストーリーになっています

というわけで、『マリアビートル』のおすすめポイント2つ目は、『気を抜いたら置いていかれる!疾走感あふれるストーリー』です

手足のある本
手足のある本

1本の新幹線に、こんなに殺し屋って乗せていいんだボン

ウバ
ウバ

おそらくは駄目ですね。

そもそも、殺し屋の存在自体が駄目ですからね……。

誰もが予測不能!二転三転するストーリー展開

構成 歯車が描かれたブロックが並んでいる

『マリアビートル』は、読者の予想を裏切り続けるストーリー展開もおすすめポイントの1つ

二転三転しながら進んでいくストーリーには誰もが驚かされます。

殺し屋が多く登場することもあり、途中退場者も多数

意外なキャラクターが途中でやられたり、予想外のキャラクターが活躍したり。

とにかく予想外の展開が繰り返され、読者の予想をこれでもかと裏切ってきます。

新幹線の中だけでも手一杯なのに、外側でも物語が進行していて、思考が追い付きません。

さらには伏線まで無数に散りばめられていて、後半の伏線回収劇は圧巻。

何気ない会話や行動が小さな伏線になっていて、そのすべてが1本の線で繋がっています。

個性も目的もバラバラなキャラクターの動きが、不思議と重なっていく。

これはもう、読んでいて気持ちが良すぎます。

そして、その勢いを崩さないまま突入するクライマックス。

この結末、誰が予想できるというのか

最後の最後まで読者を楽しませてくれるストーリーは必見です

ちなみに。

文庫版では、とあるキャラクターの後日談が収録されています。

内容はもちろん、タイトルを書くだけでもネタバレになってしまうので、ぜひ本編を読んだ後にお楽しみください。

本編のようなバイオレンスな描写はなく、とてもほのぼのとした内容なので、食後のデザート感覚で楽しめます

というわけで、『マリアビートル』のおすすめポイント3つ目は、『誰もが予測不能!二転三転するストーリー展開』です

手足のある本
手足のある本

怒涛の展開にドキドキしっぱなしだったボン

ウバ
ウバ

そうですね。

本当に最初から最後まで楽しめる作品だと思います

さいごに

まずは、ここまで読んでいただきありがとうございます。

少しでも『マリアビートル』を読んでみたいと思っていただけたら幸いです。

本作は、多数の殺し屋が登場するバイオレンスなストーリーですが、その読み心地は軽やかでマイルド。

キャラクター同士のやり取りやセリフがユーモラスに書かれていて、物騒な世界を柔らかくしてくれています。

そのようなユーモラスで独特な言い回しを、私は勝手に『伊坂節』とよんでいます。

登場人物が多く長編小説ということもあり、読書初心者の方向けとは言えないかもしれません。

しかし、『伊坂節』のおかげで、ふだんあまり読書をしない方でも最後まで飽きずに読み進めることができます

また、本作は伊坂幸太郎さんの作品の中でも『殺し屋シリーズ』と呼ばれている作品群の中のひとつで、『マリアビートル』は2番目の作品になります。

しかし各作品は関連性はあるものの続編ではなく、独立した作品になっています。

そのため、どの作品から読んでも楽しめるようになっていますので、本作から手に取るのもアリです

殺し屋シリーズの紹介記事はコチラ
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【本紹介】伊坂幸太郎『AX』──世のお父さんは、いつだって頑張っている!

新幹線という閉鎖空間で繰り広げられる、怒涛のクライムサスペンス

伊坂幸太郎さん『マリアビートル』

一度、手に取ってみてはいかがでしょうか。

最後の最後に。

『マリアビートル』が面白いと思った方は、伊坂幸太郎さんの他作品も紹介していますので、よろしかったらご訪問ください。

今日はここまで。

それでは、佐世保の隅っこからウバでした。

皆様の今日が幸せな一日でありますように。

プロフィール
この記事を書いた人
ウバさん

佐世保の隅っこで読書をしているオッサン。
妻と二人の子どもと共に細々と生きています。
読書の面白さを広めたくてブログを開設。
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