読書をしない理由のひとつに、「活字を読むのが疲れる」というものがあります。
読書離れの理由はそれだけではないにしても、正直わかります。
以前の私も同じ理由で読書を敬遠していました。
──しかし。
本当に面白い小説に出会うことで、どんどん読書が楽しくなっていきます。
今回紹介するのは、まさにそんなタイプの一冊。
活字が苦手な方でも、クスッと笑いながら最後まで読める小説です。
📘伊坂幸太郎さんの『バイバイ、ブラックバード』
五股を掛けた主人公と、なぜか一緒に別れ巡りの旅をする謎の女。
恋愛小説のようで、コメディのようで、ミステリーな。
そして最後は、なぜか心がほっこりしている不思議な物語。
それでは、詳しく紹介していきます。
基本情報
タイトル:バイバイ、ブラックバード
著者:伊坂幸太郎
出版社:双葉社/双葉文庫
発行年:2010年/2013年
ジャンル:フィクション/エンタメ小説
あらすじ
主人公・星野一彦には、「あのバス」でどこかへ連れていかれることが決まっている。
その日まで、あとわずか。
監視役として彼のそばにいるのは、不愛想で毒舌な女性・繭美。
星野が最後に願い出たのは――
「五人の恋人たち全員に、別れを告げたい」という無茶なお願いだった。
「面白そうだから」という理由であっさり許可が下り、繭美と共に星野は一人ずつ恋人の元を訪ねていく。
しかし星野は、「あのバス」の件を隠すために、
「繭美と結婚することになった」という苦しい嘘で別れ話を切り出していくことに。
はたして星野は、五人全員ときれいに別れられるのか?
そして本当に「あのバス」に乗ってしまうのか?
ユーモアたっぷりで描かれる、星野と繭美の奇妙な“別れ旅”が今、始まる――。
この小説の、ここが面白い
登場人物の、個性が濃い!
本作には様々な登場人物がいますが、その誰もが個性的です。
五股をかけた挙句、多額の借金により「あのバス」に乗ることが決まっている主人公。
監視役の規格外女性。
主人公・星野の五人の恋人たち。
誰一人として欠けてはいけない登場人物たちこそ、本書の魅力のひとつです。
それでは紹介していきます。
星野一彦:本作の主人公
五股をかけています。そのどれもが遊びではなく、しっかりそれぞれの女性を愛しています。
いやいや、愛しているからといって五股はいかんでしょ!
と、お思いの方。
読めばきっと彼のことを好きになります。
繭美:星野一彦の監視役
「あのバス」に乗るまで星野一彦の監視をしている女性で、なにもかもが規格外。
身長190cm、体重200kg。肌は白くブロンド髪。
繭美こそが、本作を本作たらしめている正体で間違いないでしょう。
態度も言葉使いも最悪で、星野も彼女のことを「常識を超えた、まったく別の星の存在としか思えず……」と言っています。
つねに辞書を持ち歩いていますが、そのほとんどの項目が黒く塗りつぶされています。
いいところがまるでないような女性ですが、読み進めていく内に惹かれている私がいました。
惚れたとは、別の感情だと信じたいですが……。
五人の恋人たち
廣瀬あかり:星野とは苺狩りで出会う。最初に別れ話をする恋人
霜月りさ子:バツイチ。海斗という小一の息子がいる。
如月ユミ:侵入するのが趣味の女性。
神田那美子:「1818」を「イヤイヤ」のように、数字を言葉にするのが好き。
有須睦子:女優。
恋人たちの詳細は書きません。誰もが個性的で、惹かれてしまう女性たちです。
それぞれにストーリーがあって、そのすべてが面白いです。
個人的には、神田那美子のストーリーでは涙腺が刺激され、有須睦子のストーリーで心が温まりましたね。
他にも登場人物は存在しますが、この七人だけ覚えていれば問題なしです。
登場人物が少ないからこそ、それぞれが持つ濃厚な個性が、本書の魅力のひとつになっています。

私が推す女性は『如月ユミ』です!次点で繭美!
活字嫌いでも読み進めてしまう『伊坂節』
本書、本当に読みやすいです。
物語がテンポよく進んでいくので、ダレることなく読み進めることができます。
なにより。
伊坂幸太郎さんの作品すべてに言えることなのですが、登場人物たちの会話がとてもユニーク。
独特の言い回しや言葉のチョイスが秀逸すぎて、どんどん引き込まれていきます。
小説を読むということは、活字だけで登場人物や場面を具体的にイメージしないといけません。
それが億劫で疲れるというのが、活字が苦手な原因のひとつです。
ですが、本書ではその心配はいりません。
会話はユニークに、情景は詳細に描かれているため、実際その場に立っているかのように感じることができます。
読みやすくて面白い。具体的にイメージしやすい文章。
活字嫌いは何処へやら。気づけばページをどんどんめくってしまいます。

イメージのしやすい本作は、とても読みやすい一冊です!
星野と繭美の掛け合いがクセになる
本書最大の魅力は、なんといっても星野と繭美の掛け合いでしょう。
まるでバディのように、あるいは長年寄り添った夫婦のように、何とも言えない関係性がツボります。
実際は債務者と監視役でしかないんですけどね。
そんなふたりの会話劇を読んでいるだけでも面白いです。
むしろ、ふたりの会話劇こそがメインといってもいいでしょう。
この会話というのが曲者で、小さな伏線をたっぷり含んでいるんです。
本当に小さな伏線。
読み進めていくと、気づけば拾っている。
伏線を回収するというより、拾っていくというニュアンス。
星野と繭美それぞれの個性に、伊坂幸太郎さんならではのユニークたっぷりで独特な会話が混ざる。
面白くないわけないっ!
そんな二人の掛け合いこそが、本書最大の魅力です。
さいごに
この記事を書くために、改めて読み直しました。
伊坂幸太郎さんの作品を読んだ感想なんて、いつも決まって『やっぱり面白いっ!』でしかないんですけどね。
とくに本作はテンポの良さが丁度よくて、読み進めるのが気持ちよかったです。
ひとりの女性と別れたら、次の女性と別れに行く。それの繰り返し。
こんな単純な物語なのに、まったく飽きない。
二度目の読了で初めて気づいた伏線なんかもあったりして。
正直なところ、二度目の方が楽しめました。
読み終わった後、自然と彼らのことを好きになっていましたし、「あったけぇ・・・」ってなる作品でした!
──こんな方におすすめです。
・普段あまり読書をしない方
・活字に苦手意識がある方
・面白い小説を探している
クスッとできて、心温まる一冊。
伊坂幸太郎さん『バイバイ、ブラックバード』
ぜひ、手に取ってみてください。
今日はここまで。
それでは、佐世保の隅っこからウバでした。
皆様の今日が幸せな一日でありますように。
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