【本紹介】長編小説デビューにぴったり!伊坂幸太郎さん『マリアビートル』

本紹介

読書を始めたばかりの頃は、長編小説って少しハードルが高く感じませんか?

正直慣れていないと疲れますし、途中でダレてしまうんですよね。

眠たくなってくるし、気づけばスマートフォンをポチポチ……。

それでも、いつかは挑戦してみたいなと思うのが長編小説ではないでしょうか。

読み終わった後の「読破してやった感」は、長編ならではの快感です。

とはいえ、どんな作品を読めばいいのかわからなかったりしますよね。

そんなあなたにおすすめなのが、この一冊。

伊坂幸太郎さん『マリアビートル』

長編でありながら、読者に飽きる隙を与えない、圧倒的な速度と緊張感で突き進むストーリー。

それを支える、個性豊かな登場人物たち。

伊坂ワールド全開で、ページをめくる手が止まらない!

そんな、長編小説デビューにぴったりの一冊を紹介します。

基本情報

タイトル:マリアビートル

著者:伊坂幸太郎

出版社:角川書店/文庫版:KADOKAWA

発行年:2010年/文庫版:2013年

ジャンル:ミステリー・サスペンス(エンタメ要素強め)

あらすじ

舞台は、東京から盛岡へ向かう東北新幹線「はやて」

息子を傷つけた中学生への復讐に燃える元殺し屋、木村

一見優等生だが、悪魔のような本性を隠す少年、王子

裏社会の依頼を受けて動く殺し屋コンビ、檸檬蜜柑

そして、とにかく運が悪くて気弱な殺し屋、七尾

同じ新幹線に乗り合わせた彼らの思惑は、次第に絡み合っていく。

疾走する新幹線の車内で、狙うものと狙われるもの。

やがて物語は、予想もつかない結末へと突き進んでいく──。

この物語の、ここが面白い!

登場人物の強烈すぎる存在感

この小説を面白くしているのは、なんといっても登場人物の濃さにあると思います。

出てくるキャラすべてが主役級!

結局は誰が主役なの?となるほどに、すべての登場人物のキャラ立ちが凄いっ!

ひとりずつ紹介していきます。

木村雄一

アルコール依存症の、どうしようもない男です。

しかし、息子が入院したことをきっかけにお酒を断ちます。

息子の渉が入院するきっかけを作った中学生への復讐のため、新幹線に乗り込みます。

なかなかにうだつの上がらない男なんですが、実は私が一番感情移入できた人物です。

王子慧

一見すると優等生に見える中学生。しかし実際は邪悪で狡猾な青年。

正直、大っ嫌いです。ここまで嫌いになれるキャラも珍しいほどの悪キャラ。

本作では重要なキャラですが、これ以上この子については語りたくないので、ここまで!

檸檬蜜柑

真面目な蜜柑と、大雑把な檸檬の殺し屋コンビ。

裏社会の大物である峰岸からの依頼を遂行するために新幹線に乗り込む。

ふたりのやり取りは、読んでいてとても気持ちよく、本作の雰囲気を柔らかくしてくれています。

とくに檸檬は、きかんしゃトーマスが好きという設定で、殺し屋なのに愛おしくすら感じます。

そんな檸檬の行動に冷静に対応する蜜柑。

完璧なコンビとなっています。

七尾(天道虫)

とにかくツキがない、運から見放された殺し屋。

相方、真莉亜からの指示で新幹線に乗り込む。

檸檬と蜜柑のコンビ同様、本作の雰囲気を柔らかくしている人物。

殺しの腕は一級品だが、とにかく運がない。

簡単なはずの仕事も、彼の不運のせいで毎回たいへんなことになる。

その他の登場人物

本作には、上記のメインを張る登場人物以外にも、物語を盛り上げるキャラクターが多数出演します。

亡くなった妻の両親に会うために新幹線に乗っている、塾講師の鈴木

木村雄一の両親、茂と晃子

押し屋の槿(あさがお)

裏社会の大物、峰岸

など、脇役とよぶには惜しいキャラばかり。

とくに塾講師の鈴木は、本作のMVPだと思っています。

その他の登場人物と紹介していますが、この誰もが濃く、メインを張れるキャラばかりです。

それぞれの登場が、物語を一層スリリングに、そして意外な方向へと進めていきます。

ウバ
ウバ

(王子以外)誰を推していいかわからないくらい、それぞれが個性豊かです。

舞台は新幹線の車内だけ

本作の舞台は、東京から盛岡までの東北新幹線「はやて」

物語のほとんどが、その車内だけで進行していきます。

この「逃げ場のない空間」が、物語に緊張感を生みます。

そこに個性豊かな殺し屋を放り込む。そりゃあ、化学反応が起きないわけがありません。

それぞれの思惑が交差して、物語は混沌を極めていきます。

街ひとつを舞台にしても足りないくらいの出来事を、新幹線の車内という限られた空間にギュッと詰め込む。

その制限が、物語に圧倒的な疾走感を与えています。

緊張感と疾走感。

その両方を味わえるからこそ、ページをめくる手が止まらない!

ウバ
ウバ

これだけのスケールの物語を、これだけのスペースに収める手腕が凄いっ!

最後までダレないテンポ

この物語は、とにかくテンポの良さが秀逸!

限られた空間で物語が展開するため、出来事が次々と巻き起こります。

ひとつひとつが短く区切られているのも、テンポよく読めるポイント!

さらには、様々な登場人物の視点で書かれているため、最後まで読者を飽きさせません。

気づけば「あと一章だけ」が、「このまま最後まで!」になってしまうはず。

最後まで一気に読ませるこのテンポの良さが、『マリアビートル』の大きな魅力のひとつです。

気持ちよい伏線回収

伊坂幸太郎さんの真骨頂と言っても、いいのではないでしょうか。

伏線回収の気持ちよさ、正直たまりません!

何気ない会話ひとつ、小さな行動ひとつ、そのすべてがしっかり繋がっている。

読み返したくなるほどの仕掛けが、随所に散りばめられているんです。

登場人物の個性も目的もバラバラ。なのに、すべてが不思議と絡み合って一本の線になる。

これは「さすが」としか言えません。

気づいた瞬間の『ああ!そういうことか!』という快感が、この作品の醍醐味です。

さいごに

最後まで読んでいただき、ありがとうございます。

『マリアビートル』は、濃すぎる登場人物、狭く閉じられた舞台、そして最後までダレないテンポと伏線回収――

どれもが揃って、読書の楽しさを存分に味わえる一冊です。

初めて長編小説に挑戦する方にも、自信を持っておすすめできます。

※ちなみに『マリアビートル』は『グラスホッパー』の続編という位置づけで、登場人物も繋がっています。

しかし、『マリアビートル』単体でも楽しめるのでご安心を。

後で『グラスホッパー』の記事も紹介できればと思っています。

ウバ
ウバ

本作を読んだら、きっとグラスホッパーも読みたくなりますよ。

今日はここまで。

それでは、佐世保の隅っこからウバでした。

皆様の今日が幸せな一日でありますように。

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