「サクッと読めて、心温まる小説が読みたい!」
そんな人におすすめの一冊。
伊坂幸太郎さんの殺し屋シリーズ第三弾!
『AX』
えっ⁉心温まりたいのに殺し屋の話ですか?
そう疑問に思う気持ちもわかります。
しかしご安心を。この作品で描かれるのは、柔らかく優しい家族愛。
誰よりも家族を大切に想う主人公に、心奪われること間違いなしの一冊。
それでは紹介していきます。
基本情報
タイトル:AX
著者:伊坂幸太郎
出版社:KADOKAWA/文庫版:角川文庫
発行年:2017年/文庫版:2020年
ジャンル:ミステリー・サスペンス・エンタメ
あらすじ
業界内でも一目置かれる殺し屋「兜」は、愛妻家であり、しかし恐妻家でもあった。
家ではまるで妻に頭が上がらない。
一人息子・克巳の誕生をきっかけに仕事を辞めたいと願うが、そのための資金を得るために依頼を受け続ける──。
表題作『AX』をはじめとする短編を通じ、殺し屋でありながら一人の父として葛藤する姿を描いたエンターテインメント小説。
この作品の、ここが面白い!
「兜」というキャラクターの魅力
本作最大の魅力は、なんといっても主人公「兜」の存在に尽きる。
冒頭のたった数ページ読むだけで、兜というキャラクターのことを好きになること間違いなしです。
まごうことなき恐妻家であり、同時に愛妻家。
妻が不在の家は、気分が楽だ。もちろん妻が苦手であるとか、嫌いであるとか、そういったことではない。
むしろ、それなりに長い結婚生活の中で、愛情は一目盛たりとも減っていないと断言できるが、常に、妻の機嫌を気にかけてしまうのは事実だった。
この一文だけで、妻への愛情と畏怖のバランスが伝わってきますね。
超一流の殺し屋でありながら、妻にはまるで勝てない。
そんなギャップがなんとも愛おしく感じて、兜を好きにならざるを得ません。
さらに、誰よりも一人息子の克巳を大切に想っている。
「息子の人生のことで頭を悩ませるのが、自分のやりたいことなんだ」
と発言するほどには、息子想いの父親なんです。
克巳とのやり取りもユーモラスで、読んでいる内に本気で「こんな男になりたい」と思わせてくれるキャラクターです。
殺し屋という物騒な稼業に身を置きながらも、家族を思うその姿こそが、この物語を温かく優しいものにしているのです。

伊坂幸太郎全作品の中でも、トップクラスに大好きなキャラクターです!
根底にあるテーマは『家族愛』
『グラスホッパー』・『マリアビートル』の続きに当たる本作は、伊坂幸太郎さんの作品中で『殺し屋シリーズ』とよばれています。
そのため物騒な表現も多々ありますが、物語の根底にあるのは間違いなく家族愛。
一流の殺し屋が恐妻家であったり、何よりも息子の人生を真剣に悩んだりと、どこか共感できる部分があるのです。
殺し屋という職業に共感できる部分はないのですが、そこに描かれているのは「どこにでもいるお父さん」なんですよね。
兜が妻に怯える描写や、一人息子の克巳とのやり取りのユーモラスさ。
ただ「強い父」ではなく、「悩みながらも息子と向き合おうとする父」という人間臭さ。
小説の中の物語なのに、どこか身近に感じることができます。
さらに、世のお父さんの「子を想う気持ち」が、物語をグッと動かすきっかけにもなります。
殺し屋の話と聞くと少し身構えてしまいそうですが、全体を通して描かれるのは『家族愛』であるため、安心して読み進めることができる作品となっています。

作品全体から感じられる家族愛に、心あったまること間違いなしです!
短編集だから読みやすい
『AX』は、兜を主人公とする連作短編集となっています。
ひとつひとつの物語は短く、とても読みやすくなっています。
長編だと最初から最後まで一気に読まないと流れが途切れがちですが、本作なら少しずつ読んでも大丈夫。
通勤・通学の合間や寝る前などのちょっとした時間に読み進められます。
「読書を始めたばかりで長編は少し不安…」という人にもおすすめしやすいポイントです。
とはいいながら、どの短編も独立しつつ「兜」という人物を通してテーマがつながっているので、ついつい読み続けてしまうのにはご注意を……。

なんだかんだで、気づけば読了してしまっている作品です!
さいごに
伊坂幸太郎さんの殺し屋シリーズ第三弾として登場した『AX』
殺し屋の日常を描きながら、根底に家族愛を持ってくることで温かく優しい作品です。
作品全体で繰り広げられるユーモアたっぷりの会話や、一流の殺し屋でありながら愛妻家で恐妻家という兜の存在が、読者の心を掴んで離さない作品となっています。
短編集で読みやすく、読書が少し苦手な人にもおすすめの一冊、
伊坂幸太郎 『AX』
いちど、手に取られてはいかがでしょうか。
ちなみに。
殺し屋シリーズの前作二作品の紹介記事も書いていますので、気になりましたら読んでみてください。
どちらも最高の作品です!
今日はここまで。
それでは、佐世保の隅っこからウバでした。
皆様の今日が幸せな一日でありますように。
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