【本紹介】こんな青春が欲しかった!伊坂幸太郎『砂漠』レビュー。

本紹介

社会人になると、つい「あの頃はよかった」と思うことがあります。

職場と家の往復だけの日々。目の前にあるのは、いつも現実。

ため息混じりに、つぶやく。

「もう一度、青春したいな」

そんな気持ちを抱える大人にこそ読んでほしい一冊。

伊坂幸太郎さんの『砂漠』

大学生五人組の、熱くてバカみたいな日々を描いた青春小説です。

大人になった今だからこそ、まっすぐ胸に刺さる。

そんな一冊を、今日は紹介します。

基本情報

タイトル:砂漠

著者:伊坂幸太郎

出版社:実業之日本社/実業之日本社文庫

発行年:2005年/2017年

ジャンル:青春小説

あらすじ

大学で出会った五人──北村、鳥井、西嶋、東堂、南。

彼らは、熱く、そしてバカみたいにまっすぐな日々を過ごしていた。

ボウリング、合コン、麻雀、通り魔事件との遭遇、捨て犬の救出、そして超能力対決。

一見ばかばかしい出来事の中で、彼らは少しずつ絆を深め、成長していく。

友情、恋愛、未来への不安、刺激への渇望。

さまざまな思いが交錯する中、社会という道しるべのない“砂漠”に放り出される前の若者たちは、今というオアシスを全力で駆け抜ける──。

この作品の魅力

登場人物のクセが凄いっ!

本作は五人の大学生を中心に物語が進みます。

その五人が個性的すぎて悶えます。

まずは主人公の北村

何事にも冷めた性格で、周囲を見下したような態度を取るため鳥瞰型と揶揄される。

どこか他人事のように世界を見ている北村ですが、実は誰よりも繊細で、心の奥には熱さを隠している。

誰よりも大学生っぽく描かれていて、本作で一番感情移入できた存在でした。

続いて鳥井

軽薄で女好き。それなりに裕福な家庭の育ちで、大学生らしからぬマンションに住んでいる。

鳥井の軽率な行動がきっかけでさまざまなトラブルに巻き込まれることもあるが、愛されキャラ。

そして西嶋

本作の個性オブ個性。

どこまでもまっすぐで、絶対に曲がらない自分を持っています。

本作の影の主人公ともいえる存在で、彼を中心に物語が進むと言っても過言ではありません。

心に残るような名言も多く残していて、読者の誰もが忘れられないキャラクターです。

連続通り魔犯であるプレジデントマンを支持していたりする。

東堂は大学一の美女。人形に喩えられる顔立ちで、多数の男に交際を申し込まれては断っている。

とてもクールな女性で、感情を表に出さない。

西嶋に負けないくらいには自分を持っていて、まっすぐな女性として描かれています。

最後に

シャイで穏やかで明るい笑顔の女性。「日向が似合う感じ」と言われる彼女ですが、超能力者です。

はい、正真正銘の超能力者です。

手を触れずに物とか動かしたりします。マ〇ックさんもビックリの本物です。

ほかにも様々なキャラクターが登場しますが、最後まで彼らを中心に物語が進んで行くので、まずは五人を覚えていれば問題なしです。

そんな五人の物語を、アパレル店員の鳩麦さんや、幹事の莞爾。市内の短大生の長谷川さんなど、一癖も二癖もあるキャラクターたちが脇を固めます。

私の推しは、やはり西嶋。現実世界では絶対に友達になれないキャラクターですが、それでも惹かれてしまう独特な魅力を持った存在です。

読み進めていく内に、自然と推しができてしまう。

そんな個性豊かすぎる登場人物たちこそが、本作の魅力のひとつです。

ウバ
ウバ

西嶋を超える個性は、きっとそんなに存在しないと思います!

エモすぎる伊坂節

このブログでは、本作を「社会人にこそ読んで欲しい」と銘打って書き出していますが、「普段あまり読書をしない方」にもおすすめしています。

しかし、実際には文庫版で五百ページもあり、読み終えるのには相応の労力を要します。

とくに読書に慣れていない方には、正直しんどいページ数かもしれません。

それでも『砂漠』をおすすめする理由は、なんといってもその読みやすさにあります。

どんだけ長くても読めてしまう、伊坂幸太郎さんの手腕には脱帽です。

本作に限らずなんですが、伊坂幸太郎さんの独特な言い回しや言葉のセンス。

登場人物の魅力の描き方など、そのどれもがクセになってしまいます。

私はそれを勝手に『伊坂節』とよんでいます。

とくに本作は、五人の青春を四季に分けて描かれており、テンポよく読み進めることが出来ます。

長編小説でありながら、あまり読書をしない人にも勧められてしまう。

そんな『伊坂節』こそが本作の魅力の一つです。

ウバ
ウバ

伊坂節にハマってしまったら、そのあとは伊坂沼にドップリです!

秀逸なストーリー

青春小説でありながら、ただ学生生活を描くだけで終わらないのが、本作の良いところ。

サスペンス要素も丁寧に練り込まれていて、最後まで飽きずに読み進めることができます。

5人の出会いから物語が始まり、合コンなど大学生らしい青春を謳歌しながら、連続通り魔犯との遭遇や、とある犯罪に巻き込まれたりと大忙しです。

いち大学生が経験するには濃すぎるほどの出来事が巻き起こりますが、現実離れし過ぎていないのが魅力です。

超能力者など非現実的な部分はありますが、これがすべて大学生の青春と言われても腑に落ちてしまう不思議。

ひとつひとつのストーリーも緻密に繋がっており、それが五人の絆を深めていったりなんかして、最後までド青春しています。

小さな伏線なんかも散りばめられていて、それを拾い集めながら読むのも面白いです。

読者を飽きさせない構成。読みやすくて面白いストーリーこそ、本書最大の魅力であり、社会人や読書をあまり嗜まない方へおすすめできる理由です。

ウバ
ウバ

読めば読書が好きになること間違いなしです!

さいごに

この記事を書くために改めて読み返したのですが、やはり最高な作品でした。

私自身は大学生活の経験がないのですが、読めば読むほどキャンパスライフへの憧れがふつふつと湧き上がってきます。

西嶋の名言に何度も心打たれながら、登場は短いながら魅力を発揮した東堂パパに心打たれたりもしながら、気づけば読み終わってました。

読み終えた後の「読み終わってしまった感」

この、なんともいえない喪失感こそ『砂漠』が名作たる所以で間違いないです。

様々な個性と魅力を持った登場人物たちの、熱くて真っ直ぐな青春を描いた不朽の名作。

伊坂幸太郎さん『砂漠』

青春を感じたい社会人や、普段あまり読書をしない方におすすめの一冊。

ぜひ、一度手に取られてはいかがでしょうか。

──ちなみに。

伊坂幸太郎さんは砂漠のような青春小説だけでなく、殺し屋が活躍するような物騒な物語も書かれています。

喋る案山子が登場する作品まであります。

もちろん『伊坂節』は健在なので、読みやすさは折り紙付き!

そのような作品についても紹介していますので、良かったら立ち寄ってみてください。

今日はここまで。

それでは、佐世保の隅っこからウバでした。

皆様の今日が幸せな一日でありますように。

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