ウバといいます。
突然ですが、皆さん。繰り返しの日々に疲れていませんか?
心、荒んでいませんか?
その心、読書で癒してみてはどうでしょうか。
『ウバログ』では、普段あまり読書をしない方に、私が読んで面白かった本を紹介する記事を書いています。
この記事があなたの読書ライフに繋がることを願って、拙いながらも丁寧に紹介していきます。
今回紹介する一冊は、こちら!
小川洋子さん『猫を抱いて象と泳ぐ』
美しくも切ないストーリーに、あなたはきっと涙する。
さっそく紹介していきます。
あらすじ
上下の唇がくっついたまま生まれた少年は、ある日チェスと出会う。
チェス盤の下に潜り込んで、次の一手を考えるというスタイルでチェスを指す彼は、いつしかリトル・アリョーヒンと呼ばれるようになる。
インディラ、マスター、ミイラ、トルコ人形。
様々な出会いと別れ。
これは、リトル・アリョーヒンの人生を描いた、はかなくも美しい物語である──。
猫を抱いて象と泳ぐの魅力
本作を読み終わった時、私は涙を流していました。
それから数日は余韻に浸ってしまい、次の小説を読む気になれませんでした。
主人公のリトル・アリョーヒンに心を寄せて、気づけばまた泣きそうになってしまう。
それほどまでに、この作品は美しい。
ひとりの男に涙させ、その心を掴んで離さない物語。
読めば心が洗われる。
そんな本作の魅力を、いくつかに分けて書いていきます。
登場人物
まず、登場人物の名前が独特すぎる!
主人公はリトル・アリョーヒン。
んー、読みにくいっ!
しかし読み進めるうちに頭から離れなくなる名前です。
純真無垢な優しい青年で、とある理由から大きくなることを恐れ、十一歳で成長が止まったような身体をしています。
「大きくなること、それは悲劇である」
この一行を胸に刻み込んでいます。
小説の中の人物ですが、彼以上に心のきれいな人間を私は知りません。
私の人生で、彼と出会えたことは幸運でした。
──さすがに大袈裟ですかね。
※ちなみに、リトル・アリョーヒンは、実在するチェスプレイヤー「アレクサンドル・アリョーヒン」から取られています。
リトル・アリョーヒンにチェスを教えたのは、廃バスに住む肥満男のマスター。
廃バスに住んでいるし肥満だし。すごい量のお菓子を作るし食べつくすし。
それだけキャラが濃いのですが、リトル・アリョーヒンにチェスを教える時の彼は、底なしに優しい。
マスターの言う「慌てるな、坊や」が好きです。
本作にはヒロインがいます。
名をミイラといいます。
ミイラと聞いて、何を思い浮かべますか?
その、思い浮かべたままのミイラです。
ちなみにミイラは二人いて、ヒロインは二人目のミイラです。
名前はミイラですが、とても美しい女性に描かれています。
ミイラとリトル・アリョーヒンとの関係が、本作をはかなく美しい物語にしてくれています。
ミイラと何回も書いていると、まるでエジプトの話でもしているようです。
※本作にエジプトは出てきません。
この三人をはじめとして、ほとんどの登場人物が心優しくて、読者の心を癒してくれます。

一度聞いたら忘れられない名前ばかりですね。
美しすぎる物語
本作の魅力はシンプルです。
ある一つの魅力が大きすぎるのです。
それは、物語そのものが美しすぎるということです。
優しくて美しい文章に、そっと抱きしめられたような気持ちになります。
本作が持つ切なさや儚さすら、ただ愛おしいのです。
まず、冒頭一行目から、読者の心を鷲掴みにしてきます。
リトル・アリョーヒンが、リトル・アリョーヒンと呼ばれるようになるずっと以前の話から、まずは話したいと思う。
まずリトル・アリョーヒンって誰やねん!ってなります。
そこから、まさかチェスの話に繋がるとは思いませんでした。
私はチェスをまったく知らず、少しだけ読むのに苦戦しました。
しかし。
彼がチェスと出会ってからの物語を、私は美しいとしか言い表せません。
読書が人の心を洗うということを、私はこの作品から学びました。
タイトルも『猫を抱いて象と泳ぐ』ですからね。
このタイトルもすばらしい。
読み進めるうちにタイトルの意味がわかっていき、その意味に納得した時、心が温かくなります。
タイトル回収を経て、ラストに待っているのは涙。
最後まで読み進めたあなたの心は、読む前より確実にきれいに洗われています。

本作ほど、読後の余韻に長く浸ったのは初めてでした!
──癒されたくなってきましたか?
さいごに
本作を読み終わった時、この作品は絶対に紹介したいと思いました。
それと同時に、私では本作の魅力を表現しきれないとも思いました。
私の中で何度も嚙み砕きながら、どんな言葉で伝えようかと考えましたが、結局は「美しい!」だけしか出てきませんでした。
ですから、本作に対する愛情だけで記事を書きあげた次第です。
「偶然の出会いが一生の宝物になる」
私は、本作をタイトルに惹かれて買いました。作者が小川洋子さんだと気づいたのは読み始めてからです。
たまたま寄った書店で平積みされていなかったら、出会わなかったかもしれません。
おかげさまで小川洋子沼にズッポシなのですが、こんな出会いも読書の魅力の一つです。
読書は心の栄養素。
何冊読んだかより、どんな本に出会えたか。
私のすすめた一冊が、あなたの読書ライフに繋がったのなら幸いです。
読者の心を癒す、儚くも美しい一冊。
小川洋子さん『猫を抱いて象と泳ぐ』
ぜひ一度、手に取られてはいかがでしょうか。
基本情報
タイトル:猫を抱いて象と泳ぐ
著者:小川洋子
出版社:文藝春秋/文春文庫
発行年:2009年/2011年
ジャンル:現代小説
本作以外にも、小川洋子さんの作品の紹介記事を書いています。
よろしければ、そちらものぞいてみてください。
ここまで読んでいただきありがとうございます。
それでは、佐世保の隅っこからウバでした。
皆様の今日が幸せな一日でありますように。



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